不況の波をスポーツ界はどのように乗り越えるのか(その2)

「不況の波をスポーツ界はどのように乗り越えるのか その2」

前回は、同名のタイトルで2008年秋から年末までの不況がスポーツへ与えている情報を掲載しました。
今回は、1月以降、更に悪化している経済環境に対して、「撤退か存続か…揺らぐ企業スポーツ」という視点で、後向きな情報と前向きな情報と分けて紹介します。

まずは撤退情報から・・・

◆名門の退場
 1994年、社会人ラグビーで無敵を誇っていた神戸製鋼所の公式戦連勝記録を71で止める金星を挙げ、関西社会人リーグ初優勝を果たしたワールド。トップリーグにも参加し、現在は下部のトップウエストリーグでプレーを行う。
 その関西の名門が、今シーズンで活動に一区切りをつける。現在は40人の部員中、外国人選手を含む16人がプロ契約。しかし、来季からは全員が社員選手という態勢に移行する。
 ラグビーは比較的、トップの理解を得やすいスポーツ。
 しかし、百貨店の衣料品売上高の低迷が続くなど事業環境は厳しく、苦渋の決断を迫られた。
 アメリカンフットボールの名門チーム、オンワードオークスも今季で活動を停止する。ワールドと同様に、スポンサーであるオンワードホールディングスの経営環境が悪化したことが理由だ。
 他の業界でも撤退が相次いでいる。日本リーグ13回の優勝を誇るアイスホッケーの西武を運営するプリンスホテルは、今季限りでの廃部を表明した。年間運営費は約5億円。経営環境の悪化で、維持していくことが難しくなった。
 また、田崎真珠の女子サッカーチーム、TASAKIも休部。テニスのジャパン・オープンに特別協賛してきた米保険大手AIGグループの撤退も明らかになった。
 世界的に販売台数が急減している自動車業界も、チームの休部やレース撤退な
どの動きが急だ。05年の都市対抗野球大会で優勝をした三菱ふそうトラック・バスの野球チームは、今季限りで休部する。
 スズキは、09年から市販車を改造して公道や未舗装路を走る世界ラリー選手権(WRC)活動の休止を決定。とくに欧州でブランド力の向上を図るため、08年シーズンに初めてフル参戦したが、年間数十億円とされる関連費用を節減する必要があると判断した。
 日本車最多の47勝を挙げるなど、WRCの雄である富士重工業も撤退する。
「本当はやめたくなかった」(森郁夫社長)としながらも、事業の選択と集中を進める必要が生じたため、年間予算約70億円という費用の削減を優先した。これによってWRCへ参戦する日本メーカーはなくなる。
 世界最高峰の自動車レース、F1からの撤退を決めたホンダも、金融危機にのみ込まれた形だ。しかし、これについては、市場の悪化だけが要因でないという見方がある。
 同社は日本最大のオートバイレース“鈴鹿8耐”などに引き続き参戦する。ある自動車産業ジャーナリストは「本当にお金が惜しいのであれば、すべての活動をやめるはず」と指摘した上で、「車体のスピードではなく、ホンダ自身の変革の速さを訴求したかったのでは…」と分析する。
 自動車メーカーにかかわらず、CSR(企業の社会的責任)活動では環境対策に注目が集まる。ホンダはそこに新たな夢を求め、F1からの撤退は早晩決断されたのでは、という見方も。前兆は07年に導入されたアースカラーの車体。ただ、深刻な業績悪化が引き金となったのは紛れもない事実だ。
(2008/12/30 フジサンケイビジネスアイ)

◆JOC:スポンサーの新日石とウイルコ、契約更新せず
 日本オリンピック委員会(JOC)の協賛社として08年までオフィシャルパートナー契約を結んでいた新日本石油と印刷・通販会社のウイルコが、契約を更新しないことが13日、関係者の話で分かった。
 JOCは原則的に協賛企業と4年契約しているが、両社は次回ロンドン五輪までとなる0912年の契約は断念した。同じくJOCの協賛社だったAIU保険や野村ホールディングスが契約を更新しない意向を示しており、経済危機の影響が五輪スポンサーにも及んできた模様だ。新日本石油は野球の日本代表の協賛も務めてきたが、12年ロンドン五輪で野球が五輪競技から除外されることも考慮し、JOCへの支援を継続しないことになった。
(2009/01/14 /毎日新聞)

◆日産が野球、卓球、陸上を休部  経営合理化の一環で
 多くのプロ野球選手や卓球の五輪代表を輩出した日産自動車は9日、経営合理化の一環として硬式野球部、卓球部(男子)、陸上部を休部すると発表した。硬式野球部は12月末まで、卓球部と陸上部は3月末まで活動する。
 硬式野球部は都市対抗大会で1984年と98年に優勝し、2003年の日本選手権も制した。06年セ・リーグ新人王に輝いた広島の梵英心内野手や阪神などで活躍した元投手の川尻哲郎氏らが在籍した。
 女子が94年に休部した卓球部は、男子が日本リーグで最多の19度の優勝を誇り、1月の全日本選手権を最後に現役引退した五輪4大会代表の松下浩二氏や全日本男子シングルス通算100勝の斎藤清(埼玉工大職)らがかつて所属した。
 硬式野球部と卓球部はともに59年の創部で、50周年の節目に幕を閉じる。
(2009/02/09-17:55 /共同通信)

◆「プロ化について行けず」 ラグビー縮小のセコム
 過去、3季TLを戦ったセコムが活動存続の危機に陥った。「事実上、部としての体裁がなくなると考えていい。有志のメンバーでラグビーを続けることになるでしょう」。ラグビー部の久保田部長はこう話した。強化中止の理由は「職場の仲間を会社全体が応援するというスタンスで始めたチーム。プロ化の波についていけなかった」(久保田部長)ためだ。
 2003年にスタートしたTLだが、リーグとしてのレベルが上がるにつれプロ契約の選手や外国人選手が増加し始めた。08年度からは外国人選手の同時出場が3人まで認められるようになった。強化が進むと同時に、各チームの強化・運営費もアップ。セコムはその流れについていけなくなった形だ。
 既に、ワールドなどが縮小を明らかにしたばかり。日本ラグビー協会の真下専務理事は「企業スポーツとして始まっているリーグなので、企業の状況に左右されるのはしかたがない。連鎖的にならないことを願うほかない」と他チームへの影響を危惧(きぐ)したが、TLの未来像が見えない限り、今後、同じようなチームが出ないとも限らない。
(2009.2.10 22:34 産経ニュース)

◆企業スポーツ 不況雨  名門武富士 バレー撤退
 不況の分厚い黒雲は、埼玉県内の企業スポーツ界にも雨を降らせ始めた。13日に今季限りでの活動終了を発表した女子バレーボール・ Vリーグ1部(プレミアリーグ)の「武富士バンブー」は、杉戸町に本拠地を置き、リーグ準優勝も果たしたチーム。社会人ラグビー「セコムラガッツ」(狭山市)が企業チームとしての活動停止を発表してからわずか3日。関係者の危機感は募る一方だ。
 5月の黒鷲旗大会が最後の公式戦となるバンブーは、2001年に発足し、リーグ準優勝が1度、プレーオフにも3度進出している。今季リーグは8位で、後半戦の真っ最中。14、15日は越谷市立総合体育館で2連戦に臨む。
 チームは13日も昼前から同体育館で練習した。「イトーヨーカドー」を率いた時代にも廃部を経験した石原昭久監督(43)は練習前、「廃部のうわさは耳にしているが、まだ正式には何も聞かされていない。今度こそ、誤った情報であってほしい」と言葉少なに語った。
 石原監督とともにヨーカドー時代から在籍する内藤香菜子主将(28)も「あの時と同じ思いはしたくない」と表情を曇らせたが、練習が終わって間もない午後3時頃、武富士本社から活動終了が公表された。
 動揺は、県内バレー界全体に広がった。上尾市出身の石川友紀選手(21)の母校・市立川越高のバレー部は、夏合宿で練習場を借りるなど交流が深い。前監督の伊藤博義コーチ(64)は「部員にとって、あこがれのチーム。地元選手育成への影響は計り知れない」。
 バンブーは創設9季目の今季、他競技との連携も強化していた。
 浦和レッズや埼玉西武ライオンズ、ハンドボールの大崎電気などとともに、県内6クラブチームの連携事業に参画。入場券の相互割引など新たなサービスで地元ファンの掘り起こしに乗り出していた。それだけに大崎電気のクラブ幹部は「企業チームの同志と連携できなくなるのは残念」と肩を落とす。武富士本社(東京都新宿区)の広報部は「チームを引き継ぐ企業を探している」としているが、所属16選手の将来は宙に浮いたままだ。
 県内のトップチームが相次いで活動停止を余儀なくされる事態について、県体育協会の三戸一嘉・専務理事は「厳しい経済事情の下、スポーツはもう企業におんぶにだっこではいられない。自立を考える曲がり角に来ている」と話している。
(2009年2月14日  読売新聞)

◆社会人野球:TDK、「千曲川」野球部が廃部し統合へ
 TDK(本社・東京都中央区)は13日、都市対抗2回出場のTDK千曲川(長野県佐久市)野球部を廃部し、同社のTDK(秋田県にかほ市)野球部に20日付で統合すると発表した。今年の都市
対抗予選は一本化されたTDKとして出場する。
 同社は統廃合理由について「厳しい経済環境に伴い、収益構造を見直す改革を進め、企業スポーツ活動についても検討を重ねた結果」と説明。現在の部員18人(選手14人)の今後の去就は未定としている。
 TDK千曲川は82年に創部。都市対抗は76回大会(05年)に初出場し、昨年の79回大会はエース阿部正大の活躍で3年ぶり2回目の出場を果たした。日本選手権にも過去5回出場。出身のプロ選手には山本淳(西武)、大城祐二(阪神)らがいる。
(毎日新聞 2009年2月13日)

◆協賛、8社が継続せず=17社が内定−JOC
 日本オリンピック委員会(JOC)は17日、マーケティング委員会を開き、昨年までのオフィシャルパートナー28社のうち野村ホールディングス、キリンビール、パナソニックなど8社が契約を更新しないことが報告された。厳しい経済状況が背景にあるが、契約を更新しない社がこれだけ多数に及ぶのは異例。
 一方、14社は協賛を継続。新規で3社を獲得したため、2009年から12年までの新マーケティング制度で17社が内定した。
 新制度では、最高ランクは4年間で6億円の協賛金で、それ以外は2億2000万円。総額は昨年までの4年間で獲得した78億円の77%にとどまるが、態度を保留している6社が契約継続となれば、95%に達する見込みという。 (了)
(2009/02/17-20:09 /時事通信社)

次に前向き情報から・・・

◆好感・印象重視
 不況からの撤退が相次ぐ半面で、企業ブランドや理念を幅広くアピールできる場として、スポーツ活動に力を入れる動きも依然として根強い。東京電力もその一つだ。
 同社は年々人気が高まるばかりの駅伝を2006年からシンボリックスポーツとして掲げている。今年4月には元旭化成の名ランナーでマラソン世界一にも輝いた谷口浩美さんを長距離・駅伝チームの監督に迎え、来年元日に行われる「全日本実業団対抗駅伝大会」(ニューイヤー駅伝)の初出場を果たした。
 「社内や地域の活性化に寄与でき、社会貢献なども担える。これからも引き続き取り組んでいく」−。それが同社の企業スポーツに対するスタンスだ。
 ラグビートップリーグで活躍する「クボタスピアーズ」。クボタにとってもラグビーはカンパニースポーツ。プロ化が進む中、日本人選手の大半は同社社員で、「従業員のモチベーションの向上や一体感の醸成に寄与している」(広報室)。
 東京ガス、東邦ガス、大阪ガスの都市ガス大手3社も「社員の士気を高める」ことを狙いに野球部活動に力を入れる。今年の都市対抗に出場した東邦ガスの試合には、東京ドームに数多くの東ガスの社員が駆けつけるなど、業界で連携する動きも目立つ。
 旭化成もスポーツを通じた社会貢献活動を強化する。また、「当社の柔道部、陸上部の戦績は五輪など世界レベルでも多くのメダルを獲得している」(広報室)といった強烈な自負心ものぞく。
 確かに企業の支援態勢が万全でなかったら、長い五輪の歴史の中で、これだけ多くのメダリストを輩出できたのかという指摘もある。
 ただ、景気悪化が長期化する懸念もあるなか、スポーツとのかかわり方について、改めて問い直す企業がさらに増えてくるのは確実。
 その際、収支だけを判断基準に存否を決定できない独特の難しさが、この世界にはある。充実を求められているCSR活動ともからみ、企業は難しい選択を迫られることになる。
(2008/12/30 フジサンケイビジネスアイ)

◆トヨタは継続
 日産自動車が運動部の休部を発表した9日夜、トヨタ自動車の渡辺捷昭社長は、名古屋市内で開かれた硬式野球部の日本選手権連覇祝賀会の席上、運動部の休部は考えていないことを強調。「みなさんのご支援によって、この硬式野球部をもり立てていただきたい」と決意を語った。
 また、日本野球連盟の松田昌士会長(JR東日本相談役)は「国鉄民営化の際、(国鉄関係の硬式野球部は)一つのチームもやめさせなかった。今も全部元気を出してやっている」と述べ、社会人野球への支援を呼び掛けた。
(2009年2月11日 毎日新聞 東京朝刊)

◆伊東らの活動、日立が支援=スキー・ジャンプ
 ノルディックスキー・ジャンプのトリノ五輪代表、伊東大貴(23)と伊藤謙司郎(19)=ともにサッポロスキッド=の競技活動費を支援するスポンサーに日立製作所が決まったことが21日、分かった。
 両選手は昨年12月末まで所属していた土屋ホームの支援縮小の影響を受け、今月から所属先をスポーツ用品販売のサッポロスキッド(札幌市)に変更。関係者によると、所属先は今後も継続するという。 (了)
(2009/01/21-22:56 /時事通信社)

◆西武 不況下の挑戦 大学と提携、広告の売り方工夫 
 広告費削減などプロ野球界にも不況の波が押し寄せる中、元気な球団がある。昨季日本一の西武だ。法人営業の目標は、強気に前年比プラス2億円。専門営業マン7人を中心に20人のチームで練り上げる今季の戦略とは−。
 昨年12月、球団の営業マンが西武鉄道沿線にある埼玉県内の大学を訪れた。提案書には「御校とのパートナーシップ契約について」。各部門の責任者が行う野球ビジネスの特別講義、インターン生の受け入れやオープンキャンパス開催…。多彩な提案に大学側も興味津々だった。地域密着を進める球団と、名前を高めたい大学。球界では珍しい新ビジネスが今春に動きだす。
 ほかにもビジネスが眠っていた。昨年の西武ドーム68試合の中継映像からフェンスなど球場内の広告を徹底検証。露出度が高い場所で、さらに高値で売れる広告や、30カ所の新たなスペースも探し出すことができた。
 外野フェンス広告主の金融会社を「少し上乗せすれば、これだけ価値のある場所に」とデータを片手に説得。露出の多いベンチ前の契約を成立させた。荒原正明事業部長(40)は「不況で企業も苦しい。だからお金を出す理由を明確にする」。
 営業部門は一昨年の裏金問題を機に、組織を変えた。スポーツ経営学を学んだ幹部を中心に、他球団からも人材を集めた。地域密着を旗印に掲げ、昨年は大宮公園野球場(さいたま市)での開催も初めて仕掛けた。2008年の観客動員は前年比32万人増を記録。上昇率は12球団一の約30%だった。
 スポーツマネジメントが専門の広瀬一郎多摩大大学院教授は、不況下でスポーツ界が生き残るためのキーワードに「公共性」「地域」などを挙げる。「西武はノウハウを持った人材を入れて産業再生した。何をすると何の価値が上がるか。それを分かった上で戦略を切っている」と評した。
(2009年2月14日 東京新聞)

配信されるそれぞれの情報量からも今の世情が窺えるわけですが、スポーツの現場では、自らのスポーツへの取り組みと同様に、「諦めない」取り組みを続けています。
サポートシステムは商行為における「選択肢の情報」に価値を見出し、スポーツの現場へ還元させます。
現場の諦めない取組の一助となれる様、普及に努めます。
2009/2/23  山ア

※記事は、JISS情報研究部「j-net」より配信された情報を元に編集しています。